蕎麦屋に「如月」という名前が多い理由

結論(先に要点だけ)

  • 昔の月名「如月(きさらぎ)」は〈早春〉を連想させ、季節感を大事にする蕎麦文化と相性抜群。
  • 茶室文化とのつながり――国宝茶室「如庵」の影響で、料亭・蕎麦屋が“○○庵/如月庵”と名乗る流れが出来た。
  • 2000 年ごろから広がったフランチャイズ〈十割そば きさらぎ〉の知名度も、“きさらぎ”だらけに拍車を掛けた。 これらが重なって「『如月』という名前の蕎麦屋、多くない?」という錯覚(?)を生んでいるわけです。以下、もう少し噛み砕いてご説明します。

1. 和風月名は蕎麦屋の“鉄板ネーミング”

  • 旧暦の雅な月名(睦月・弥生・水無月…)は、和菓子店や割烹でも屋号として重宝されます。
  • 中でも 如月=早春 は「寒さが残るので衣をさらに重ねる〈衣更着〉」という語源説が有名で、まだ湯気の立つ温蕎麦が恋しい季節感と合致。
  • しかも 発音が柔らかく字面も左右対称で看板映え──書家さんに頼むときも筆が走りやすい。
    www.ndl.go.jpkaigoshoku.mynavi.jp

※「睦月」「師走」も屋号に見かけますが、“むつき”“しわす”…より“きさらぎ”の方が読みやすいのがポイント。


2. 茶室「如庵」と“庵”文化

  • 犬山城下に現存する 国宝茶室『如庵』(織田有楽斎作)が茶人の憧れで、「如月庵」「○○庵」と名乗る料理屋・蕎麦屋が江戸後期から増加。
  • 蕎麦屋はもともと茶屋から派生した業態なので、“侘び寂び+庵号”は王道スタイル。
    www.meitetsu.co.jp

3. フランチャイズ〈十割そば きさらぎ〉の影響

年代出来事ざっくり解説
1990 年代後半東京・福生で 「十割そば きさらぎ」 創業石臼挽き十割を売りに全国紙に載る
2000 年代直営+暖簾分けで地方都市へ拡大福岡・千葉・埼玉などに同名店
2010 年代〜一部閉店・独立改称も、“きさらぎ”の看板だけ残存「あちこちに如月がある」感覚を強化
  • 旧ブログや SNS でも 2005 年時点で「福生の十割そばきさらぎ」が“食べログ福生1位”と紹介されており、業界内でネームバリューが定着しました。 manoa.blog14.fc2.comwww.kisaragi-soba.com
  • 独立後に屋号だけ流用する店も多く、“如月”は チェーン+個人店のハイブリッド・ブランド と化しています。

4. まとめ ― 「きさらぎ現象」は三重奏

  • 季節を味わう蕎麦屋と早春の月名が相思相愛
  • 茶の湯文化で磨かれた「如」の字の格調
  • フランチャイズ拡大による“視認性アップ”効果 この三拍子により、全国を旅すると「また如月?!」と感じるわけです。

余談ですが、都市伝説の“きさらぎ駅”に迷い込むより、きさらぎ蕎麦に迷い込む方がずっと安全で腹も満たされます――ぜひお試しを。

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