Vercel AI SDKの概要と競合分析

了解しました。Vercel AI SDKについて、TypeScriptとNext.jsを前提に、以下の観点を網羅的に調査します:概要、主な特徴、代表的な機能、環境構築方法、できること、他ライブラリとの連携、プロダクトへの埋め込み方法など。少々お待ちください。

TypeScript/Next.js向け Vercel AI SDK 詳細ガイド

1. SDKの概要(目的・位置付け)

Vercel AI SDKは、Next.jsの開発元であるVercel社が提供するオープンソースのAI統合ツールキットですvercel.com。TypeScriptで記述されたWebアプリケーションに対話型のチャットUIやストリーミング応答を簡単に組み込むことを目的としており、React/Next.jsをはじめSvelteやVueなど主要フレームワークで利用できますvercel.com。大型言語モデル(LLM)の各種API(例えばOpenAIやAnthropicなど)の違いを吸収し、統一されたインターフェースで扱えるようにすることで、開発者がインフラやプロバイダーごとの細かな実装に煩わされずにAI機能の実装そのものに集中できるよう設計されていますsdk.vercel.aisdk.vercel.ai。要するに、ChatGPTのようなAI搭載アプリを素早く構築するための支援ライブラリであり、Next.jsアプリケーションとの親和性が高い位置付けです。

2. 主な特徴

Vercel AI SDKの主な特徴を以下にまとめます。

  • ストリーミング対応のUIヘルパー: サーバーからの部分的なレスポンスをリアルタイム表示するストリーミング機能をサポートしています。ReactやSvelte、Vue、Solid向けのフロントエンドフックにより、テキスト生成結果を逐次表示してチャットUIやQ&Aインターフェースを構築可能ですwww.npmjs.com。ストリーミングによりユーザーは長文応答も待たずに逐次確認できます。
  • Reactサーバーコンポーネント対応: Next.jsの**React Server Components (RSC)**を活用したジェネレーティブUIの構築も可能ですwww.npmjs.com。LLMの生成結果からコンポーネントをストリーミングレンダリングする先進的な機能(AI SDK RSC)も提供されており、リッチな動的UIを実現できますwww.telerik.com
  • 複数モデルプロバイダーの統一サポート: OpenAI(GPTシリーズ)やAnthropic(Claude)、CohereHugging FaceGoogle Vertex/GeminiAWS Bedrockなど主要なモデルプロバイダーを幅広くサポートしていますwww.npmjs.com。SDKの統一API上で切り替え可能なため、コードの変更を最小限に異なるモデルを試すことができますwww.npmjs.com
  • Node/サーバーレス/エッジ実行対応: Node.js上はもちろん、VercelのServerless FunctionsやEdge Functions上でも動作するよう設計されていますwww.npmjs.com。環境に応じた最適化(例えばEdge環境での低遅延応答)により、AIアプリを大規模にスケールさせることが可能ですvercel.com
  • ストリーム処理のライフサイクルフック: 応答ストリームの開始から終了までの各段階(開始時、各トークン受信時、完了時)にコールバックを差し込むことができますvercel.comvercel.com。これにより、ストリーミング途中でのログ出力やデータベースへの逐次書き込み(チャット履歴の保存など)を同一リクエスト内で実行でき、リアルタイム性を損なわずデータ管理が可能ですvercel.comvercel.com
  • 高レベルのユーティリティとUIフック: バックエンドではテキスト生成や構造化データ生成、ツール呼び出しなどのAPIが統一的に提供されsdk.vercel.ai、フロントエンドではチャット用や文章補完用のフックが用意されていますvercel.com。これらを組み合わせることでエンドツーエンドでAI機能を簡潔に実装できます。
  • オープンソース&テンプレート充実: SDK自体はオープンソースで開発が活発に行われておりvercel.com、公式に多数のスターターテンプレートが提供されていますsdk.vercel.ai。チャットボットやレコメンダ、RAG(検索強化)など様々なユースケース向けの参考実装が入手可能です。

3. 代表的な機能一覧とその説明

Vercel AI SDKが提供する主要機能を整理すると次の通りです。各機能と用途について表にまとめます。

機能・コンポーネント説明 (概要と活用方法)
ストリーミング応答LLMのストリーミング出力(逐次トークン生成)をクライアントに送信する機能です。Next.jsのAPIRouteやRoute Handler上でStreamingTextResponseを返すことでサーバー送信イベント(SSE)による部分応答を実現しますvercel.com。例えばOpenAIのストリーミングAPIレスポンスをOpenAIStreamユーティリティでラップし、StreamingTextResponseに流し込むだけで、途中結果を順次レンダリングできますvercel.com。これによりユーザーは長い回答も待ち時間中に逐次内容を確認できます。
チャット用フック (useChat)フロントエンド(React)でチャットUIの状態管理を簡素化するフックです。メッセージの配列状態や入力中テキスト、送信処理ハンドラを提供し、フォームにバインドするだけでチャット送受信のロジックが完成しますvercel.comvercel.com。初期設定では/api/chatエンドポイントにPOSTリクエストを送り、そこで受け取ったAI応答ストリームを自動でメッセージ配列に反映しますsdk.vercel.ai。このフックにより数行のコードでChatGPT風の対話インターフェースを実装可能ですvercel.comvercel.com
テキスト補完フック (useCompletion)単発のプロンプトに対する**テキスト生成(Completion)**を扱うためのフックです。こちらも入力状態と送信関数、そして生成結果completionを提供しますsdk.vercel.aisdk.vercel.ai。ユーザーの入力に応じて文章の続きを生成する機能や、一問一答形式のQ&Aコンポーネント実装に適しています。ストリーミング表示にも対応しており、逐次補完結果がcompletionに追加されリアクティブにUI更新できます。
マルチプロバイダー対応APISDKのコアAPIでは、OpenAIやAnthropicなど様々なLLMプロバイダーのモデルを統一した形式で指定可能です。例えばgenerateText関数の引数modelopenai("gpt-4")anthropic("claude-2")のようにモデルを差し替えるだけで、別のサービスに切り替えられますsdk.vercel.aisdk.vercel.ai。SDK内部のアダプターが各API呼び出しを吸収するため、開発者はプロンプト内容やUIロジックを変更せずに複数モデルの比較や試行ができますwww.npmjs.com
OpenAIとの連携OpenAI公式のAPI(RESTエンドポイント)や専用ライブラリとシームレスに統合できます。例えば、OpenAI Edge API(fetchベースの軽量クライアント)を使い、createChatCompletionで得たストリームをOpenAIStreamへ渡すと、ReadableStream形式に変換されますvercel.comvercel.com。それをreturn new StreamingTextResponse(stream)で返却すれば、Next.js経由でクライアントにストリーム配信できますvercel.com。このようにわずかなコードでOpenAIのストリーミングチャットを構築可能です。なお、この処理はEdge関数上での実行が推奨されており、export const runtime = 'edge'と指定することで低レイテンシな応答を実現しますvercel.com
LangChainとの連携LangChainライブラリとも併用が可能です。SDKには**LangChainAdapter**が用意されており、LangChainのストリーミング対応出力(例えばChatOpenAIモデルの.stream()メソッド)を受け取り、SDK標準のストリームレスポンスに変換できますsdk.vercel.aisdk.vercel.ai。一例として、Next.jsのAPI Route内でLangChainのChatOpenAIを使いプロンプト処理し、その結果(AsyncGeneratorのストリーム)をLangChainAdapter.toDataStreamResponse()で変換して返すコードが公式に示されていますsdk.vercel.aisdk.vercel.ai。クライアント側では通常のuseCompletionフックでそれを受信でき、LangChainの高度な推論ロジックとSDKのUI簡便性を両立できます。
ストリームコールバック前述の通り、ストリーミング処理にはライフサイクルフックを仕込めます。具体的にはOpenAIStreamstreamText利用時に、onStartonTokenonCompletionといったコールバック関数をオプション指定可能ですvercel.comvercel.comonStartでプロンプトをデータベースに記録したりvercel.comonTokenで逐次生成されたトークンをログ出力したり、onCompletionで最終的な回答を保存する、といった処理をリアルタイムに組み込めますvercel.com。これによりチャット履歴の永続化やデバッグ情報取得をスムーズに行えます。
構造化データ生成 (useObject)テキストだけでなく、JSONなど構造化オブジェクトの生成にも対応しています。useObjectフックを利用すると、あらかじめ定義したZodスキーマ型に従ったオブジェクトをLLMが逐次生成し、それをリアルタイムに受け取ることができますzenn.devzenn.dev。サーバー側ではstreamObject関数にモデルとプロンプト、スキーマを渡すと、スキーマ整合性の取れたオブジェクトをストリーミング出力できますzenn.dev。例えば「通知メッセージのリスト」という構造をスキーマで定義しLLMに生成させ、UI側で逐次表示するといったリッチUIがわずかな実装で可能です。
その他の機能この他にも、プロンプトエンジニアリング用のユーティリティや、LLMにツール実行をさせるTool Calling機能(関数呼び出し相当の操作)sdk.vercel.ai、ベクトル検索やRAGに便利なLanguage Model Middlewaresdk.vercel.ai、音声入力や画像生成との連携sdk.vercel.aiなど、多彩な拡張機能が含まれています。それらは必要に応じて追加モジュールを読み込むことで利用できます。

4. 環境構築手順(インストール、セットアップ、依存関係)

TypeScript/Next.js環境でVercel AI SDKを利用するためのセットアップ手順を解説します。以下はNext.js 13(App Router)を前提とした構築手順です。

  • Node.jsとNext.jsの準備: Node.jsは少なくとも v18以上を使用してくださいgithub.com(ストリーミングAPI対応のため)。Next.jsプロジェクトを作成していない場合はnpx create-next-app@latest等で新規プロジェクトを用意します。
  • SDKパッケージのインストール: 以下のコマンドでVercel AI SDK本体と必要な追加パッケージをインストールします(パッケージマネージャはnpm/yarn/pnpmいずれも使用可)。

bash

# Vercel AI SDKコア npm install ai # (例)OpenAIプロバイダーを使う場合はOpenAIアダプタ npm install @ai-sdk/openai # (例)React用フロントエンドフック npm install @ai-sdk/react

SDKコア(ai)に加え、利用するモデルプロバイダーに応じたパッケージ(例: OpenAIなら@ai-sdk/openai、Anthropicなら@ai-sdk/anthropic等)をインストールしますgithub.com。また、React/Next.jsでフックを使う場合は@ai-sdk/reactを追加しますgithub.com。これによりTypeScript型定義も含め利用準備が整います。

  • APIルートの実装: Next.js App Routerの場合、AIモデルへの問い合わせロジックはサーバー側のRoute Handlerとして実装します。例えばapp/api/chat/route.tsを作成し、以下のように記述します。

typescript

import { streamText } from 'ai' import { openai } from '@ai-sdk/openai' export async function POST(req: Request) { const { messages } = await req.json() const response = streamText({ model: openai('gpt-4'), messages, // systemプロンプトやその他オプションも指定可 system: 'You are a helpful assistant.' }) return response.toDataStreamResponse() }

上記ではクライアントからPOSTされたメッセージ履歴を受け取り、OpenAIのGPT-4モデルに問い合わせています。github.comgithub.comstreamTextは与えたモデルに対するストリーミング応答を返し、最後にそれをtoDataStreamResponse()ストリーミング可能なレスポンスに変換してリターンしていますgithub.com。これにより、このエンドポイントにリクエストが来るとSSE形式のレスポンスが返されるようになります。環境変数にOPENAIのAPIキー(例: OPENAI_API_KEY)を設定しておくこともお忘れなくgithub.com

  • クライアントコンポーネントの実装: 次にフロント側でチャットUIを実装します。例としてapp/page.tsx(または適宜ページコンポーネント)内でクライアントコンポーネントを使用し、useChatフックを利用します:

tsx

'use client' import { useChat } from '@ai-sdk/react' export default function ChatPage() { const { messages, input, handleInputChange, handleSubmit } = useChat() return ( {messages.map(m => ( {m.role}: {m.content} ))} ) }

このフックはデフォルトで先ほど実装した/api/chatにリクエストを送り、メッセージの配列messagesを自動更新しますsdk.vercel.ai'use client'ディレクティブを忘れず付与し(フックはクライアント側で動作)、フォーム送信時にhandleSubmitを呼び出すことでメッセージがサーバーに送信されますvercel.comvercel.com。あとはmessagesをループ表示すれば、ユーザーとAIの対話がリアルタイムに画面に描画されます。

  • 依存関係・設定: OpenAIやAnthropicを利用する場合はそれぞれのAPIキーを環境変数に設定してください。また、Edge Runtimeを活用する際は上記APIルートファイルでexport const runtime = 'edge'と指定するとエッジリージョンで関数が実行され高速な応答が可能ですvercel.com。開発環境では.env.localにキーを入れ、デプロイ時はVercelのダッシュボードから環境変数を設定します。 以上で基本的な環境構築は完了です。実行してみて、ブラウザ上でユーザー入力に対するAI応答がストリーミング表示されればセットアップ成功です。

5. できること(ユースケースの具体例)

Vercel AI SDKを用いることで、さまざまなAI搭載機能やアプリケーションを開発できます。代表的なユースケースの例をいくつか挙げます。

  • チャットボット/対話エージェント: 最も基本的な用途はカスタムチャットボットの構築です。ユーザーからの質問にLLMが回答するQ&Aシステムや、社内問い合わせ対応チャットボットなどを簡単に実装できます。ストリーミング表示によって応答の臨場感も高まり、ChatGPT類似のスムーズな対話体験を提供できますvercel.comvercel.com。実際、VercelはNext.js+AI SDKで構築されたフル機能のOSSチャットボット例も公開しておりwww.npmjs.com、認証や履歴管理を含めた高度な実装の参考になります。
  • 検索+生成(RAG: Retrieval Augmented Generation): SDKを使えば社内ドキュメント検索+要約回答のような高度なアプリも構築可能です。例えばユーザーの質問に対し、ベクトルデータベース(PineconeやWeaviate等)から関連文書を検索し、その情報を元にLLMが回答を生成する、といった一連の流れもサポートできます。SDKはこのためのミドルウェア機能やテンプレートも提供しており、社内ナレッジベースQ&Aのスターターキットも公開されていますvercel.comvercel.com。これにより自社データに基づくチャットBotやドキュメント検索システムを比較的容易に実現できます。
  • AIアシスタントUI(生成支援): 既存のWebアプリに文章生成や要約のアシスト機能を追加することも容易です。例えばブログ投稿画面でタイトル案をAIが提案したり、ユーザー入力のテキスト要約をリアルタイムで表示したりするUIを組み込めます。SDKのuseCompletionフックを使えば入力に応じた続きを常に表示させるようなオートコンプリート/サジェスト機能も実装可能ですsdk.vercel.aisdk.vercel.ai。Vercelの公式テンプレートには顧客レビュー文を要約するアプリなども含まれておりvercel.com、業務支援ツールへの応用例として参考になります。
  • マルチモーダル対応アプリ: テキスト以外の入出力を扱うマルチモーダルAIアプリの構築も行えます。例えばユーザーが画像をアップロードすると自動で説明文(Altテキスト)を生成するツールvercel.comや、画像編集を指示文で行うアプリ(例:「この写真から人物を消去して」→画像編集)vercel.comなど、Hugging FaceやReplicateのモデルと連携して画像生成・編集を行うUIも実装されています。これらもNext.js+AI SDKのテンプレートが公開されており、チャットインターフェース経由で画像生成AIを操作するような高度な例も存在しますvercel.com
  • その他のユースケース: 上記以外にも、コードアシスタント(コード自動翻訳や補完)やvercel.com対話型ゲームマスター(物語生成)など、発想次第でさまざまなAIアプリに応用できます。要は「テキスト生成あるいはそれに付随する機能で実現できること」であれば、Vercel AI SDKが土台となってくれるでしょう。公式のテンプレート一覧にはSlackボットやSQLクエリ自動生成、PDFからのクイズ自動作成などユニークな例も揃っていますvercel.comvercel.com。これらを参考にすることで、自分のユースケースに近い実装を迅速に進めることができます。

6. 他ライブラリやサービスとの連携方法

Vercel AI SDKは単体でも強力ですが、他のライブラリやAIサービスと組み合わせることで更に活用の幅が広がります。その代表的な連携先と方法を紹介します。

  • OpenAI APIとの連携: OpenAIのGPT-3.5やGPT-4シリーズを使う場合、SDKのOpenAIアダプターを利用できます。前述のようにopenaiプロバイダー(@ai-sdk/openai)にモデル名を渡して使用したりgithub.comgithub.com、またはOpenAI提供のopenai-edgeクライアント経由でストリームを扱うこともできますvercel.comvercel.com。どちらの場合もAPIキーOPENAI_API_KEY)を環境変数で設定しておけば、SDKが内部で適切にヘッダ付与して呼び出します。OpenAIの関数呼び出し機能(Function Calling)については、SDKのTool Calling機能を使って似たような実装(LLMがツールを選択し結果を返す)を構築可能です。
  • Anthropic (Claude)との連携: Anthropicの提供するLLM _Claude_シリーズもSDKでサポートされていますwww.npmjs.com@ai-sdk/anthropicパッケージを追加し、例えばanthropic('claude-2')のようにモデル指定すれば、OpenAIの場合と同様にgenerateTextstreamTextで利用できますsdk.vercel.aisdk.vercel.ai。Anthropic APIキー(ANTHROPIC_API_KEY)も環境変数で設定可能ですsdk.vercel.ai。なお、Anthropicのストリーミング出力は一度に大きなチャンクが返る特性があり、SDK経由のstreamObject利用時は逐次ではなく遅延して一括生成になる場合がありますsdk.vercel.ai。この点は留意が必要ですが、通常のテキスト生成利用(streamText)では問題なくストリーミング表示できます。
  • LangChainとの連携: LangChainはLLMアプリ開発向けフレームワークで、プロンプトテンプレート管理やチェーン構築が便利ですが、UI部分は自前実装が必要でしたsdk.vercel.ai。Vercel AI SDKと組み合わせることで、LangChainの高度な対話管理を活かしつつUIはSDKに任せる、という統合が可能です。具体的には、LangChainで用意されたChatOpenAI(OpenAI APIラッパー)から.stream()で応答をストリーム取得し、それをSDKのLangChainAdapter.toDataStreamResponse()に渡してNext.jsのAPIレスポンスとしますsdk.vercel.aisdk.vercel.ai。あとはクライアントでuseCompletionuseChatを使えば、内部的にはLangChainが動いていてもブラウザ側はSDK標準の方法で取り扱えますsdk.vercel.aisdk.vercel.ai。LangChainによるエージェント(ツール実行を伴うLLM)出力も同様に取り込めるため、強力なAIエージェントをWeb UI化するのに役立ちます。
  • その他APIサービス: 上記以外にもHugging Faceの推論APICohereAWS BedrockAzure OpenAIReplicateなど多様なサービスを統一的に扱えますwww.npmjs.com。例えばHugging Faceのテキスト生成モデルもSDK経由でストリーミング可能ですし、画像生成系のモデル(ReplicateのAPIなど)も適宜fetchで呼んで結果をSDKのストリームレスポンスに載せることができます。SDKは低レベルのfetchをラップする形で設計されているため、必要に応じて自前のAPI呼び出し結果をnew StreamingTextResponse(stream)で返すことで、どんなサービスでもストリーミングUIに組み込めます。加えて、ベクトルデータベース(Pineconeなど)やOCRサービスとの連携も、生成したテキストや埋め込みベクトルをやり取りするだけなので、一般的なAPI統合の知識で実装可能です。総じて、SDKが土台となり各種AIサービスを繋ぐハブのような役割を果たすイメージです。

7. Next.jsアプリケーションへの組み込みとベストプラクティス

Next.jsアプリにVercel AI SDKを組み込む際のポイントとベストプラクティスを解説します。基本的な流れは前述のセットアップ手順(APIルートとフックの実装)になりますが、Next.js特有の注意点や推奨事項を以下にまとめます。

  • App Router推奨: Next.js 13以降のApp Router環境での利用が推奨されています。App Routerではapp/api/*/route.tsRoute Handlerを定義し、Edge Functionとしてデプロイする構成が取りやすいため、ストリーミング機能との親和性が高いですvercel.com。Pages Router(従来のpages/api)でも実装は可能ですが、その場合はNode.jsの標準HTTPレスポンスを部分送信する形になります。App Routerならreturn Response形式で自然にストリーミングレスポンスを扱えるので、可能であればApp Routerを使いましょう。
  • APIキーとセキュリティ: OpenAIやAnthropicなどのAPIキーはサーバー側のみで使用し、クライアントに露出しないようにします(当然ながら、SDKのフロントフック内部でキーを使うことはありません)。Next.jsでは環境変数にNEXT_PUBLIC_を付けない限りクライアントに漏れないので、キーはOPENAI_API_KEY等そのまま.envファイルに設定してください。また、エンドポイントを社内利用に限定する場合は認証・認可(例えばJWTトークンチェックやBasic認証)もRoute Handler内で実施することが望ましいです。SDK自体は認証機能を持たないため、必要に応じて自前で保護します。
  • エッジ関数の活用: Vercel AI SDKはエッジ環境での動作を考慮して設計されていますvercel.com。OpenAIなどへのリクエストは外部API呼び出しになるため、ユーザーに極力早く応答を返すには各地に分散配置されたEdge Function上で処理するのが有利です。Next.jsではRoute Handlerファイルにexport const runtime = 'edge'と書くだけでEdge Function化できますvercel.com。Edge環境では一部Node.jsモジュールが使えない制約がありますが、SDKとfetchで完結する処理であれば問題ありません。したがって低レイテンシ+高スループットを重視する場合、Edgeへのデプロイを検討してください(Vercelにデプロイすれば自動的にEdge利用が可能です)。
  • 状態管理と永続化: useChatフックによりメッセージ状態管理は自動化されますが、リロード時に履歴が消えてしまいます。履歴の永続化が必要な場合は、サーバー側でonCompletionコールバック内にデータベース保存処理を入れるか、あるいは応答生成後にDBに書き込む処理を追加しますvercel.com。また、useChatにはオプションで過去メッセージを渡す機能もあるためsdk.vercel.ai、サーバーから取得した履歴を初期値として読み込ませることも可能です。さらに公式ドキュメントにはSupabaseやRedisを用いたメッセージ永続化のガイドも用意されていますcommunity.vercel.com
  • エラーハンドリング: AI APIへのリクエストは**失敗(例: レート制限超過やネットワークエラー)**の可能性もあります。Route Handler内でtry/catchを用いてエラー時にHTTPステータスとメッセージを返すようにすると、フロントのフック側でerror状態を検知できます(useChatuseCompletionは内部でエラー状態管理も持っています)。SDKにはエラークラス(AIErrorなど)も定義されているのでsdk.vercel.ai、状況に応じて使い分けてください。ユーザーには適切なエラーメッセージを表示しつつ、不要なAPI再試行を避ける実装が望ましいです。
  • パフォーマンスと費用対策: LLMの呼び出しはトークン数リクエスト頻度によって費用が発生します。SDK自体はリクエスト削減のためのSWR(stale-while-revalidate)戦略を内部実装していますがqiita.com、開発者側でも入力に対する過剰な呼び出しを防ぐ工夫が必要です。例えばユーザーが入力フィールドに文字をタイプするごとに送信するのではなく、送信ボタン押下時のみAPI呼び出しを行う、一定時間入力が止まったら送信する(デバウンス処理)などです。また、必要に応じてトークン長やモデルの切り替え(例えば安価なモデルを使う)も検討してください。SDKを活用すればこれらのパラメータも一元管理できるので、UIからモデル切替オプションを提供するような高度な実装も容易です。
  • 開発フロー: 開発時にはまずシンプルなプロンプトで挙動確認し、その後徐々に機能拡張していくことをお勧めします。SDKにはPlayground(ブラウザ上で各モデルにプロンプトを試せるUI)も用意されていますvercel.com。これを使って期待する応答が得られるプロンプトをあらかじめ調整し、その結果をコードに反映すると効率的です。さらに、SDKはOpenTelemetryによるトレース機能も試験提供しており、必要に応じてリクエストの可視化・分析を行うこともできますsdk.vercel.aisdk.vercel.ai。 以上のベストプラクティスに留意しながら実装を進めれば、Next.jsアプリにおいてVercel AI SDKの能力を十分に引き出すことができるでしょう。

8. 実装例やリソース紹介

最後に、Vercel AI SDKに関する実装リソースや参考になるGitHubリポジトリを紹介します。公式ドキュメントと合わせて活用することで、よりスムーズに開発を進められます。

  • 公式ドキュメントサイト: Vercel AI SDK ドキュメントsdk.vercel.ai – SDKの全貌を網羅したドキュメントです。基礎概念からAPIリファレンス、テンプレート集まで充実しています。特に「Getting Started」や「Providers」「Cookbook」セクションは実装のヒントになります。

  • GitHub リポジトリ (SDK本体): vercel/aigithub.com – Vercel AI SDK自体のソースコードリポジトリです。READMEにはインストール方法や基本的な使用例がまとまっておりgithub.comgithub.com、またexamplesディレクトリ以下にNext.jsやSvelteなど各環境向けのサンプルコードがあります。バグ報告や機能議論はGitHubのDiscussionで活発に行われているので、最新情報の取得にも役立ちます。

  • 公式スターターキット: Vercelのテンプレートギャラリーに、AI SDKを使った様々なスタータープロジェクトが公開されていますsdk.vercel.ai。例えば:

  • Next.js AI Chatbotwww.npmjs.com – Vercel公式のチャットボット完全実装。マルチユーザ対応やストレージ、プロンプト管理など実践的な内容です。

  • LangChain + Next.js Startervercel.com – LangChainと組み合わせたチャットエージェント実装例。LangChainの作者によるテンプレートで、エージェント機能や検索統合などが盛り込まれています。

  • RAG with Vercel AI SDKvercel.com – ベクトルDB(Postgres/pgvector)を使ったRAG型チャットボット例。ドキュメント検索から回答生成までの流れが学べます。

  • この他にもVercel TemplatesのAIカテゴリには、画像生成や音声認識、Slackボットなど多数のサンプルがありますvercel.comvercel.com。興味に応じてクローンし、自分のAPIキーを設定するだけで試せるので非常に便利です。

  • コミュニティ記事: 日本語ではQiitaやZennにもVercel AI SDKの解説記事が投稿されています。例えば「Vercel AI SDK 徹底解説ガイド」(Note記事)や「Vercel AI SDK触ってみた」(Zenn記事)などがあり、基本的な使い方から応用まで参考になりますqiita.comqiita.com。英語圏では公式ブログの「Introducing the Vercel AI SDK」vercel.comやProgress社の「A Practical Guide to Using Vercel AI SDK in Next.js Applications」などが実践的な指南として有用です。 以上、Vercel AI SDKの概要から具体的な活用方法まで網羅して解説しました。公式のリソースとコミュニティの知見をフルに活用しつつ、ぜひご自身のNext.jsアプリに高度なAI機能を実装してみてください。迅速に進化するAI領域において、Vercel AI SDKは開発者の強力な武器になるでしょう。