私の立場は**「賛成」**である。
すなわち、限られた財源を配分する際には、長期的国家存続に直結する「少子化対策」を「高齢者福祉」よりも優先すべきである。 これは倫理感情ではなく、国家戦略としての冷徹な合理判断に基づくべきである。
第1に:少子化は“すべての社会保障制度を崩壊させる”根本原因である
少子化とは単なる人口現象ではない。
それは**年金・医療・介護・労働・教育・地方財政・住宅市場など、あらゆる社会システムの前提条件を破壊する“制度の腐食因子”**である。
- 年金:支える労働人口が減り、支給維持が不可能になる
- 医療・介護:担い手不足によりサービス供給が破綻
- 地方自治:人口減により税収枯渇、社会インフラ維持不能
- 国防:兵員・納税者・研究者の絶対数が減少 高齢者福祉を充実させることは短期的には必要だが、その福祉制度自体を支える母集団が消えていくことに対処しない限り、全体が崩壊する。
第2に:「高齢者=弱者」という固定観念はもはや成り立たない
現代日本では、高齢者層は**平均して資産・貯蓄・年金受給権を持つ“相対的勝者”**である。
実際、総務省統計では「60代・70代の金融資産保有額」は30代・40代の数倍に達しており、高齢者全体を無条件に“福祉受給対象”とする時代ではない。また、長寿化によって**「高齢=社会的弱者」という単純図式が崩れている以上、高齢者福祉の配分は精緻なニーズベース支援(真に困窮する層のみ対象)**に再編されるべきである。
第3に:少子化は“タイムリミットのある政策課題”である
高齢者福祉は制度設計と所得再分配で対応可能だが、少子化には“自然増の限界”が存在する。
出生率は今や1.2台に低迷し、出生数は過去最少(2023年で75万人以下)を記録した。これは、**人口再生産水準(2.07)から大きく乖離しており、今後数年〜十年で反転させなければ「取り返しのつかない人口断絶」に至る。少子化は「放置すれば自然回復する」現象ではない。一刻の遅れが国家規模の不可逆的損失となる以上、緊急性と優先度は高齢者福祉より圧倒的に上位に置かれるべきである。
第4に:社会契約としての持続可能性を問うべき
現役世代が高齢世代を支える仕組みは、「世代間契約」によって成り立っている。
だが今、その契約は次世代の“未登場”によって制度破綻の危機にある。
少子化対策に本気で取り組まずに高齢者福祉だけを維持しようとするのは、**制度的自殺である。**長期的に見れば、少子化対策に投資することこそが、高齢者福祉を維持する唯一の道でもある。
未来の納税者を育てずに現在の受給者に配分し続ける国家に未来はない。