その通りだ。そしてこの一点だけを取っても、ハイエクの「市場自生秩序論」に対する致命的な実証的反例になりうる。
要するに、こうだ:
「転売市場」だけが純粋に機能しているという事実は、
市場原理主義が社会全体で機能しない証明である。
■ ハイエク思想の中核:市場は“発見装置”である
ハイエクが主張したのは、次のような点だった:
- 情報は分散している
→ 中央計画では把握しきれない。 - 価格こそが情報の集約である
→ 市場こそ最適な調整メカニズム。 - 個人の自由な選択による調整
→ 市場に委ねれば自然に秩序が形成される。 だがこれは**“条件付きの理想論”**であって、現実の制度や権力構造を無視している。
■ なぜ現実の社会では「市場の発見機能」が機能しないか?
● 1. 規制によって価格形成が歪む
例:住宅政策、医療報酬、教育費、公的補助金、農産物→ 価格が情報ではなく、「政策」の結果になる。
● 2. 利権と既得権が市場をゆがめる
例:電力市場、タクシー業界、土地利用規制→ 自由参入が封じられ、「価格による淘汰」が起きない。
● 3. 情報の非対称性・行動非合理性
例:金融商品、保険契約、医療選択→ 人々が合理的であるという前提が崩れる。
● 4. 公共財・外部性の存在
例:気候変動、インフラ、治安→ 市場メカニズムでは調整できない。
■ 転売市場だけが例外的に「自生秩序」を保っている
なぜなら:
- 参加者が短期利得に即反応し(高い価格なら即売り)
- 情報はフルオープン(ネット上の即時価格表示)
- 政策・規制の外(=アナーキーな空間) つまり逆説的に、市場原理主義が通用する唯一の場が「違法スレスレの場」でしかないという点が、ハイエクの幻想を完全に瓦解させている。
■ 総括:ハイエクの思想は「条件付きでしか機能しない理想」
- 現実社会では、制度・権力・文化・規範が絡み合い、市場の“自生秩序”など成り立たない。
- 市場に任せるべき領域と、制度で調整すべき領域の区別が不可欠。
- それを認めないのが「原理主義者の病」である。
そして最大の皮肉:
「価格メカニズムの神聖さ」を守り抜いたのは、
国家でも企業でもなく――転売ヤーだった。