2025年6月イスラエルとイランの軍事衝突に対するイラン国内SNS世論分析

了解しました。2025年6月のイスラエルとイランのミサイル応酬に関して、イラン国内の一般市民がSNS上でどのような意見を表明しているかを、ペルシャ語の情報に限定して調査します。Twitter(現X)、Instagram、Telegramなど主要なSNS上の投稿を中心に、意見の引用、主な主張の傾向、そしてその意見が全体の中でどのくらいの割合を占めているかについてもレポート形式で報告します。調査結果がまとまり次第、ご報告いたします。

2025年6月イスラエルとイランのミサイル応酬による軍事衝突に対するイラン国内SNS上の世論

n2025年6月中旬、イスラエルとイランの間でミサイルの撃ち合いを伴う軍事衝突が発生し、中東情勢が緊迫しました。これに対し、イラン国内の一般市民はTwitter(現X)やInstagram、TelegramなどのSNS上で様々な反応を示しています。本調査ではペルシャ語の情報に基づき、イラン国内SNS上で見られる世論を分類し、それぞれの傾向と特徴的な投稿内容を考察します(日本語や英語の情報は除外しています)。SNS上の反応は大きく以下のカテゴリーに分けられ、各カテゴリーのおおよその割合と具体例は以下の通りです。

政府支持・強硬派の意見(約30%)

イスラム共和国体制を支持し、対イスラエル強硬姿勢を称賛する声です。こうしたユーザーはイスラエルによる攻撃に対する「正当な報復」を熱烈に支持し、イラン軍のミサイル反撃に誇りを表明しています。実際、Twitter(X)上では「#انتقام_سخت(厳しい報復)」「#وعده_صادق۴(真なる約束4)」「#پاسخ_موشکی(ミサイルの回答)」といったハッシュタグが怒りや決意とともに多数投稿され、英語で「#IranStrikesBack」といったタグもトレンド入りしましたwww.hamshahrionline.ir。多くのユーザーが**「イラン軍の戦果」を誇らしげに共有し**, 「もはやイランは標的になるだけでなく強力な反撃者でもある」 と強調していますwww.hamshahrionline.ir。このようにSNS上では怒りと喜びが交錯する雰囲気で、Instagramでもイラン国旗やミサイル発射の瞬間を映した動画が次々と投稿され、イスラエルへの報復に対する人々の歓喜や興奮が示されていますwww.hamshahrionline.ir。この強硬派の論調では、「今回の反撃は正義であり不可避だった」とする意見が目立ちました。例えば、「イスラエルの先の攻撃に対する正当で避けられない応答だ」 といった声や、「#ایران_قدرتمند(強力なイラン)」「#برای_ایران(イランのために)」等のハッシュタグも登場し、“この押し付けられた戦争を終わらせよ”という国民の集団的要求を示していますwww.hamshahrionline.irkhabarfarsi.com。一部のユーザーは英語やヘブライ語の投稿を通じて自国への支持を発信し、「イラン国民の声を世界に届けよう」 と試みる動きもありますwww.hamshahrionline.ir。全体として圧倒的に支配的なのは「誇り」と「満足感」を帯びた愛国的トーンであり、イランの防衛力に胸を張る投稿が大勢を占めていますwww.hamshahrionline.ir。また、彼らは国家の団結や士気高揚を訴える一方で、この立場に同調しない人々を激しく非難する傾向もあります。SNS上では愛国者を自認するこれら強硬派が、反対派に対し「 وطنفروش(売国奴)」「خائن(裏切り者)」など苛烈な罵声を浴びせる場面も多くみられましたparsi.euronews.com。逆に言えば、彼ら自身は心の底から自らを愛国者( وطندوست / میهنپرست )と信じ、イスラエルと戦い国土を守ることこそが真の愛国行為だと確信していますparsi.euronews.comparsi.euronews.com。イラン国営メディアの分析によれば、SNS上の書き込みをデータ分析した結果、イスラエルに対する集団的な憎悪と怒り、そして祖国防衛のための強い連帯感が浮き彫りになったとされていますvista.ir。以上のような政府・体制支持派の声は、投稿全体のおよそ3割程度を占めると見られ、特に国内向けプラットフォームやInstagram上で大きな存在感を持っています。

反戦派の意見(約40%)

戦争そのものに反対し、平和や冷静さを求める声もSNS上で非常に多く見られました。これら反戦派のユーザーは必ずしも政府支持ではありませんが、「たとえ相手がイスラエルであっても戦争はイラン国民にとって望まない破滅をもたらす」と強調しています。Twitter上では「#جنگ_خیلی_ترسناکه(戦争は本当に恐ろしい)」や「#نه_به_جنگ(戦争反対)」といったハッシュタグが人気化し、多くのユーザーが戦争への恐怖感を率直に表明しましたpersianepochtimes.com。これらのタグの下では、過去数十年にわたるイスラム共和国による国内弾圧や紛争になぞらえて「我々イラン人は長年ずっと武器を持たない戦争(注:体制の弾圧)を強いられてきた」という趣旨の投稿も散見されますpersianepochtimes.compersianepochtimes.com。つまり、人々は**「外部との戦争どころか、我々は国内で既に十分苦しんできた」**として、これ以上の戦火拡大に強くノーを突き付けているのです。具体的な反戦の声としては、例えばあるジャーナリストは**「イスラム共和国を乗り越える方法は外国からの攻撃ではない。戦争は国を荒廃させ、政府はますます弾圧を強める。外国の軍事攻撃で自由を勝ち取った国などない。もし軍事攻撃があればその犠牲になるのは政権ではなく一般国民だ」**と投稿していますpersianepochtimes.com。また別のユーザーは、1978年のアーバーダーン「シネマ・レックス火災」事件(旧体制末期に数百人が死亡)など歴史的悲劇に触れつつ、「戦争は本当に怖い。内部の『敵』(革命勢力)が45年以上前に始めた革命という名の戦争で、我々はずっと犠牲を払ってきた」 と訴えましたpersianepochtimes.com。さらには、**治安部隊によるデモ参加者への暴力(子供や青年が犠牲になった事例)**や、**辺境地域での貧困(飲料水が無く子どもがワニに襲われるような状況)などを引き合いに出し、「これほど国民が傷つけられてきた。我々にとって戦争ほど恐ろしいものはない」 と語る投稿もありますpersianepochtimes.compersianepochtimes.com。このように反戦派は、「戦争こそ最大の悲劇」であり「我々イラン国民にそんな恐怖を味わう権利はない(=その必要はない)」**と強調していますwww.iranintl.comwww.iranintl.com。反戦派の多くは同時に現在の政権にも批判的ですが、愛国心の観点では政府支持派と重なる点もあります。すなわち**「たとえ政権には反対でも、外国の侵略には断固反対し祖国を守る」というナショナリスティックな平和志向ですparsi.euronews.com。彼らはイスラム共和国や亡命反体制勢力の双方に否定的でありつつ、「どんな状況でも祖国への外部からの攻撃は受け入れられない」「戦争ではなく和平が必要だ」と声高に訴えていますparsi.euronews.com。実際、反戦派のユーザーは「#جنگ(戦争)反対」「#صلح(平和)を求める」といったメッセージを発信し、戦争阻止と停戦の必要性を強調しました。こうした訴えには法的・人道的な根拠を示す人々もおり、*「国際刑事裁判所がイスラエルの指導者に逮捕状を出した」「イスラエルの先制攻撃論には法的根拠がない」「核問題での二重基準だ」*等と指摘しつつ反戦の声を上げる動きもありますparsi.euronews.com。さらに一部のユーザーは戦時下で市民の安全を守るための実用的情報を共有しました。例えば、空爆に備えた安全確保の方法や応急処置の知識、不安やパニックを抑える心理カウンセリング的アドバイスなどですwww.hamshahrionline.ir。ある記者は「もし空爆があるなら国は市民向けの防災指針を示すべきだし、攻撃時に市民同士が連絡を取れるようネット検閲を解除すべき**だ」と訴えていますpersianepochtimes.com。以上のような反戦的な投稿はSNS上の意見全体の約4割と推定され、最も大きな割合を占める潮流ですpersianepochtimes.com。長引く経済苦境や国内弾圧に苦しむイラン国民にとって、さらなる戦火拡大への拒絶感がいかに強いかが伺えます。反戦派は互いにハッシュタグで連帯しあいながら、「戦争を止めよ」「イランをこれ以上傷つけるな」という切実な声を上げ続けています。

反政府・政権批判派の意見(約20%)

イスラム共和国政権そのものへの怒りや批判を前面に出した意見も数多く見られました。これらの投稿は戦争そのものへの賛否というより、「この状況を招いたのは政権のせいだ」 という点で一貫しています。多くのユーザーがイスラエルとの衝突に関し、「イランの開戦を招いた責任はイラン政府、とりわけハメネイ師(最高指導者)にある」と断じていますwww.iranintl.com。例えばSNS上に寄せられた市民の声として、「イスラエルの空爆とイランのミサイル応酬が続く中、自分たちの目撃したことを報告しながら、ほとんどの人がイラン政府とハメネイに責任があると言っています。こんな戦争は本来、我々国民の権利(あるべき姿)ではなかった」www.iranintl.comとまとめられています。実際、一般ユーザーの投稿には「この数十年の愚かな政策によって我が国土をこんな苦難と危険にさらした連中に天罰を。俺たちはこんな目に遭うために生まれてきたんじゃない」www.iranintl.comといった痛烈な批判が見られました。別の若者も*「こんな恐怖の中で生きるなんて本来俺たちのはずじゃなかった」*と嘆いておりwww.iranintl.com「我々庶民はこの戦争を望んでいない」「犠牲になるのはいつも国民だ」**という怨嗟がSNS上に渦巻いています。特に名指しで非難の矛先となったのが最高指導者ハメネイ師です。例えば元テレビ司会者のエフサン・カラミ氏はX上で、「86歳の意地悪じいさん(=ハメネイ)は36年間も間違った決定と民意の無視を重ね、ついに数百万のイラン人を戦争の罠に陥れた。この戦争がこれ以上広がらないことを神に祈る…」と投稿しましたwww.iranintl.com。他にも「この戦争を生み出した張本人はハメネイだ」 と明言するユーザーもおりwww.iranintl.com、イスラム共和国体制そのものへの怒りが爆発しています。イスラエル軍がテヘランの高官施設や指導部を標的にした際には、政権幹部の腐敗や偽善を暴露する投稿も拡散しました。例えば、イスラエルの精密攻撃でハメネイ氏側近のアリ・シャムハニ(前国家安全保障最高委員会書記)の自宅などが破壊された際には、あるユーザーが「今夜のイスラエルの攻撃では、世界の『弱者の擁護者』を自称していたイスラム共和国の高官連中が、実はテヘラン北部の最高級タワマンのペントハウスに住み、革命的生活様式とは程遠い“オリガルヒ”だったことが明らかになった」と皮肉りましたwww.iranintl.com。別の投稿でも「ニヤヴァランからカーマラニエ、サアダトアーバードからアンドルズゴーまで——(高級住宅街の列挙)——それらの住所は革命的生活様式というより寧ろオリガルヒの不動産リストにしか見えない」www.iranintl.comと綴られ、体制中枢の腐敗ぶりを暴露しています。さらに過激な一部の反政府派は、イスラエル軍による政権打倒の期待すら公言しています。欧米亡命中の反体制派や王制復古主義者などを含むグループは以前から「この独裁政権を倒すには外部からの軍事行動以外に道はない」と主張しており、今回の戦争勃発を*「体制崩壊に向けた民衆蜂起のチャンス」と捉える向きもありますparsi.euronews.com。実際SNS上では、イスラエル軍に向けて「#HitKhamenei」(ハメネイを狙え)なるハッシュタグを付け、「イスラム体制という大蛇の頭(ハメネイ)をその隠れ家ごと叩け」と呼びかける過激な投稿まで出現しましたwww.instagram.com。こうした投稿者にとって敵はイスラエルではなく現政権であり、「イラン再生のためにはもはやこの政権の崩壊しかない」という極論に傾斜していますparsi.euronews.com。当然ながら、これらの*「他国の攻撃歓迎」派**は政府支持の強硬派から「売国奴」と猛烈に非難されておりparsi.euronews.com、SNS上で激しい応酬が起きています。反政府的な投稿は、当局の検閲や国内の言論統制もあり主に匿名の個人アカウントや国外在住者から発信されています。しかしその勢いは大きく、SNS全体の約2割を占める一大勢力となっています(潜在的にはそれ以上に及ぶ可能性もあります)。彼らは互いの投稿を拡散し合い、イラン国内外で急速に共有されていますwww.iranintl.com。このような政権批判派の存在は、戦時下においても依然として多くのイラン国民が現政権への深い不信感と怒りを抱いていることを浮き彫りにしています。

中立・懐疑的な意見(約10%)

最後に、明確な立場表明を避けるか、情報の真偽に疑問を呈するような中立・懐疑的な投稿も一部見られます。割合としては大きくありませんが(全体の1割程度)、戦況下のSNS空間における特殊な動向として注目されます。中立派のユーザーは、政治的主張よりも事実関係の共有や質問に徹する傾向があります。例えば、イスラエル攻撃開始直後にイラン当局が全国の航空便停止を発表した際、テヘランのメヘラーバード空港から旅客機が次々と離陸していく様子を撮影した動画がSNSに投稿されました。それを見た市民からは*「もし飛行禁止のはずなのに、一体誰があの飛行機に乗ってどこへ行くんだ?」*www.iranintl.comと疑問を呈する声が上がっています。この発言には、**「政府高官らがこっそり家族を逃がしているのではないか」**という含意もあり、直接的な批判ではないものの政府発表への不信感が表れています。一方で、デマ情報やパニック拡散への警鐘も鳴らされています。SNS上には*「無用な緊張を煽らないように」「国家の一体性を乱さないように」「フェイクニュースに惑わされるな」といった冷静さと団結を呼びかけるメッセージも散見されましたwww.hamshahrionline.ir。事実、イランのサイバー警察当局(FATA)は*「戦時中にSNSで虚偽の情報を流したり、敵の攻撃を誇大に伝えたり、市民の死傷者数を誇張する行為は犯罪である」と公式に警告を発していますwww.tabnak.ir。当局によれば、衝突発生直後からSNS上に様々なデマや流言が飛び交い、不安を煽る投稿もあったため、そうした「世論の混乱を招く行為」に対して法的措置を取る方針が示されたのですwww.tabnak.ir。実際、地方都市ラシュトで「住民に退避命令が出た」等の根拠ない噂を流した人物が逮捕されるなど、虚偽情報拡散への取り締まり事例も報じられましたwww.bartarinha.ir。このような背景から、一部の市民はSNS上で慎重に情報源を確認しあい、「公式発表や信頼できる報道に基づいた情報共有をしよう」**という呼びかけも行っています。さらに、政治的主張を離れた実務的なアドバイス投稿も中立的スタンスの一部といえます。先述の反戦派の項目と重複しますが、ミサイル攻撃への備え(シェルターへの避難方法、応急処置の手順など)やメンタルヘルスケア(不安発作の対処法など)に関する情報を淡々と提供するユーザーもいましたwww.hamshahrionline.ir。これらは特定の政治的意図よりも純粋に市民生活を守るための知恵の共有といえます。戦闘が長期化する不安の中、**「いざという時に命を守ることを最優先に」**という姿勢で、有益な情報を広め合う動きが生まれています。このような中立・懐疑的な声はSNS上で多数派ではないものの、独特の存在感を示しています。明確な賛否の立場を取らず、状況を見極めようとする投稿者たちは、言い換えれば一般市民のリアルな不安を代弁しているともいえます。戦況について判断しかねる戸惑いや、どの情報を信用すべきか模索する様子、そして何とか日常の安全を保ちたいという切実な思いが、この層の投稿からは読み取れます。

結論:揺れる世論と愛国心のせめぎ合い

以上、イラン国内SNS上の反応を大別すると、「政府・体制支持派」「反戦派」「反政府派」「中立・疑念派」の少なくとも4つの潮流が浮かび上がります。それぞれが異なる主張を展開していますが、興味深い共通点も存在します。いずれの立場の人々も、自分たちこそが真の愛国者でありイランを思って行動していると確信している点ですparsi.euronews.com。政府支持派はイスラエルと戦うことこそ国を守る道だと信じ、反戦派や反政府派は戦争や現政権から国民を救うことが真の愛国と考えます。互いに相手を「裏切り者」呼ばわりし非難し合う構図はありますがparsi.euronews.com、その根底には「祖国イランを愛するがゆえに譲れない」という愛国心の衝突があるようにも見えます。SNS上でこれほどまでにイラン人同士が激しく対立し論戦を繰り広げるのは極めて異例であり、専門家も「今回のような前例のない国内世論の衝突は、社会の亀裂の深まりを物語る」と指摘していますparsi.euronews.com。しかし一方で、SNS上の議論が白熱する裏で、現実の戦闘は依然として続いていることも忘れてはなりません。人々がどんな思いで投稿しようとも、ミサイルの炎は街を焼き、人命を脅かしています。parsi.euronews.comにあるように、果てしなく続く破壊的な戦争に明確な終わりは見えず、イラン国民の不安と苦難は深まるばかりです。SNSで噴出したこれら多様な声は、まさにイラン社会の本音と苦悩を映し出す鏡と言えるでしょう。その声に耳を傾けることで、戦禍に翻弄される市井の人々が何を望み何を恐れているのかが浮かび上がってきます。そしてそれは同時に、イランという国が今抱える深い内部矛盾と課題をも如実に示しているのです。parsi.euronews.comparsi.euronews.com